2014年04月30日

ガストン・レビュファ 星と嵐




今回紹介するのは、ガストン・レビュファの『星と嵐』です。

 

僕が読んだのは集英社文庫版。

山岳文学としての金字塔、超有名な一冊なので読んだことがある人も多いと思います。レビュファはフランスのマルセーユ生まれにしてシャモニの名ガイド。そして『山の詩人』とも言われる文才で山行記を文学に昇華されたと言われる人物です。また、本の執筆にとどまらず映画まで作ったというのだからたまげます。

『星と嵐』は副題に『6つの北壁登行』と書かれている通り、6つ北壁を登った山行記となっています。グランド・ジョラス、ピッツ・バディレ、ドリュ、マッターホルン、チマ・グランデ・ディ・ラヴァレド、アイガー。正直、聞いたことがあった名前はグランド・ジョラス、マッターホルン、アイガーの3つだけでしたが他の北壁登行記も素晴らしいです。

文章には仲間と山に対する愛が溢れ、臨場感と緊張、登った喜びに満ちています。まさに文学。

読むほどに痺れるフレーズも出てきます。

例えば、

『ザイル・パーティーの同志愛こそ、真にすばらしいものだが、このクラックの端までは一人の力で行かなければならない。一人でこれをよじ登るのだ。二〇メートル下には仲間がいる。もし、スリップしたら、墜落はひどかろう。ザイルがちゃんとあるにはあっても、役には立たない。しかし、わたしはザイルなしには、友情なしには登れない。このザイルが心を温めてくれるのだ』(P52 グランド・ジョラス、ウォーカーバットレス登攀中)

『このように、あこがれから、人生の大きなよろこびは生まれる。けれどもあこがれはいつでも抱いていなければならない。わたしは思い出よりもあこがれが好きだ。』(P57 グランド・ジョラス、ウォーカーバットレスを登ったあと)

『わたしは解けた雪でぬれたポケットに、冷たくなった手を突っ込み、また出しなおすのをためらっていたが、自分に言いきかせた。「二人のうちでガイドは自分だ。ガイドたるものは不死身でなければならない」そう言いきかせると、わたしは指を凍傷にやられない確信が湧いた。』(P92 ピッツ・バディレの北壁登攀中)

『天に向かってそそり立つピラミッドの頂上で、かよわい人間のわたしたちは、地球が眠りにつく場面に立ち会っている。それから地球とともに夜へ身をゆだねる。』(P134 マッターホルン北壁を登ったあと)

『三日間、わたしたちは難場、寒気、嵐など、人間に刃向かうものにしか遭遇しなかった。〜中略〜 そしていま、わたしは晴天の時に成功したアイガーの貧しさを思うのだ。』(P201 アイガー北壁を登ったあと)

困難は愛するが、危険は大嫌いというレビュファ。困難が多い北壁の登攀を仲間と成し遂げる、その喜びが1文字1文字から感じられます。読めば読むほどアルパインクライミングをしたくなる名著です。

素晴らしい一冊でした。
posted by マツモトケイジ at 22:24|